1. ドメイン・ページのURL・メールは別々に引き継ぐ
「ドメインはそのまま使えるか」という問いには、3つの答えが含まれています。ドメインそのもの、サイトの各ページのURL、独自ドメインのメールです。3つは動いている場所が違うので、作り直したときに起きることも違います。
| 引き継ぐもの | そのまま使える条件 | 作り直しで起きること |
|---|---|---|
| ドメイン | 自分の名義で、更新と設定の変更ができる | 新しいサイトへ向け直せば、同じドメインで公開できる |
| ページのURL | 新しいサイトで同じパスのページを作る | パスが変わったページは、旧URLからの転送を設定する |
| メール | MX・TXTレコードと、メールボックスを残す | DNSの置き場所を移すと、レコードを入れ直すまで届かない |
ドメインの裏側には、さらに4つの置き場所があります。ドメインを登録している事業者、DNS(どのサーバーに何を届けるかを書いた表)を置いているネームサーバー、サイトの公開先、メールのサービスです。自社サイト chapter-tech.com を2026年10月26日に調べると、登録はAmazon Registrar、DNSはCloudflare、サイトの公開先はCloudflare Pages、メールはGoogle Workspaceで、4か所に分かれていました。
作り直しで変わるのは、普通はサイトの公開先だけです。DNSの中のサイト向けのレコード(AレコードやCNAMEレコード)を新しい公開先に書き換えれば、ドメインは同じまま新しいサイトが表示されます。メール向けのMXレコードとTXTレコードに手を付けなければ、メールはそれまでどおり届きます。
反対に、DNSの置き場所ごと移す場合や、メールボックスが旧サーバーや作成ツールの中にある場合は、メールの引き継ぎが別の作業になります。どちらに当たるかは、登録先・DNS・メールの置き場所を公開情報で調べると分かります。
なお、Wixの ○○.wixsite.com のように、ツールが用意するURLで公開しているサイトは、作り直すとURLが変わります。Wixのヘルプには「301 リダイレクトは、独自ドメインでのみ機能します」と書かれています。ツールごとの条件は自作ホームページを修正するか作り直すかを比べた記事にまとめています。
2. 登録者と管理権限を確かめ、移管が要るかを決める
最初に、4つの置き場所を書き出します。登録先とDNSとメールは、公開されている情報から調べられます。
| 調べるもの | 使える道具 | 自社ドメインの結果 |
|---|---|---|
| 登録先・ネームサーバー | ICANN Lookup(.jp は JPRS WHOIS) | Amazon Registrar、Cloudflare のネームサーバー |
| DNSの置き場所 | Google Admin Toolbox の Dig で NS を引く | holly.ns.cloudflare.com ほか1台 |
| メールの届け先 | 同じ Dig で MX を引く | aspmx.l.google.com ほか4台 |
- ICANN Lookup(lookup.icann.org)と JPRS WHOIS(whois.jprs.jp)では、ドメインを登録している事業者と、指定されているネームサーバーが分かります。
- Google Admin Toolbox の Dig(toolbox.googleapps.com/apps/dig/)で、ドメインを入れて NS を選ぶとネームサーバーの名前が、MX を選ぶとメールの届け先のサーバーの名前が出ます。名前に、DNSやメールを提供している会社のドメインが入っていることが多く、自社ドメインでは Cloudflare と Google の名前が出ました。
- TXT には、メールの送信元を証明するSPFなどの設定が入っています。自社ドメインでは、Google のメールサーバーを許可するSPFが1件ありました。
名義と管理権限は、公開情報だけでは確かめきれません。登録者の名前は伏せられていることが多く、管理画面に自分でログインできるか、更新の請求が誰に届くかで確かめます。名義が制作会社だった場合の確かめ方は、解約後もホームページを使えるかを契約書で確かめる記事にまとめています。
移管(ドメインの登録先を変えること)が要るのは、今の登録先のままでは新しいサイトへ向けられない場合です。作成ツールで取ったドメインは、ツールごとに条件が違います。2026年10月26日に、各ツールの公式ヘルプで確かめました。
| ドメインを取った場所 | 置いたまま向けられるか | 移管の条件・注意 |
|---|---|---|
| Wix | 向けられる(WixのDNSレコードを編集する) | 購入から60日後。完了まで通常最大7日 |
| ペライチ | 向けられない(ペライチでのみ使える) | 購入から60日以上、期限まで15日以上。3日〜2週間 |
| ジンドゥー(クリエイター) | 向けられない(DNSも変えられない) | 契約終了日の40日前までに依頼 |
| ジンドゥー(AIビルダー) | 向けられない(DNSも変えられない) | 移管を始めた時点で、そのドメインのメールが使えなくなる |
| Canva | 向けられる(ネームサーバーを変える。Canvaのサイトは表示されなくなる) | 購入から60日後。取り消し不可、最大1週間 |
| STUDIO | ドメインを販売していない | ― |
- Wixは、移管したあとビジネス用メールを使うには、MXレコードを追加し直す必要があるとしています。ネームサーバーを外部に切り替えると、ドメインはWixに登録されたまま、DNSはWixが管理しなくなります。
- ペライチのドメインの画面で追加できるレコードはCNAME・MX・TXTで、移管後にメールを使う場合はMX・TXTレコードの設定が必要と書かれています。
- ジンドゥー(クリエイター)の解約の案内は、ドメインを外へ移管するなら契約更新日の45日以上前の手続きを勧めています。.jp のドメインは、移管先の指定事業者番号を添えてサポートへ依頼します。
- レンタルサーバーの特典で取ったドメインにも条件があります。エックスサーバーの「独自ドメイン永久無料特典」のドメインを他社へ移管するには、ドメイン1年分の更新料金を解除手数料として払います。ロリポップの「ドメインずっと無料」のドメインはムームードメインで管理されていて、ロリポップの契約や自動更新を止めると無料が外れ、次の更新から費用がかかります。
ツールに書かれている60日は、ドメインの国際的なルールに沿ったものです。ICANNの現行の移管ポリシー(2024年2月改訂)では、登録や前回の移管から60日以内の移管を、今の登録事業者が拒否できます。登録者の情報を変えた後にも60日のロックがかかり、事業者によっては変更の前に外せます。ICANNの理事会は2026年6月7日に、登録や移管から60日の期間を30日(720時間)に短くする内容を含む改定を採択しましたが、10月26日の時点で施行日は公表されていません。.jp のドメインの登録先を変えるときは、認証コード(AuthCode)が必要で、有効期限は発行の翌日から数えて35日後です。
3. 旧ページと新ページの対応表を作る
ページのURLは、ドメインを変えなくても、作り直しで変わることがあります。変わるかどうかは作り直しの設計で決められます。WordPressからWordPressへ作り直すならパーマリンクの設定をそろえる、ファイルで作るなら同じパスにページを置く、という方法で旧URLを残せます。残せるページは転送の設定が要りません。
残せないページは、Googleの「サイトを移転する方法」に沿って、旧URLごとに行き先を決めます。
- 旧URLの一覧を作ります。今のサイトのサイトマップ(sitemap.xml)、Search Consoleでエクスポートできるページの一覧、名刺やチラシに載せたURLを集めます。
- 旧URLごとに、新URLか「削除」を決めます。内容が対応するページがあれば、サーバー側の恒久的なリダイレクト(301か308)で転送します。対応するページが無いものは、404か410を返します。
- トップページにまとめて転送しません。Googleは、多数の旧URLを関連性の低い1つのURL(新しいサイトのトップページなど)へ転送すると、soft 404 とみなされる場合があると書いています。
- 新しいサイトの内部リンクを、新URLに書き換えます。転送に頼ると、サイトの中を移動するたびに転送がはさまります。
- 転送は長く残します。Googleの目安は一般的に1年以上です。同じドメインの中でパスが変わるだけなら、Search Consoleのアドレス変更ツールは要りません。
転送の設定は、新しい公開先で行います。ドメインを新しいサイトへ向けたあとは、旧サイトの転送の機能は使われません。公開先ごとの公式の説明は次のとおりでした。
| 新しい公開先 | 転送の設定 |
|---|---|
| Cloudflare Pages | _redirects ファイル。番号を書かないと302になるので、301と書く |
| Netlify | _redirects ファイル。番号を書かなければ301 |
| Vercel | vercel.json。恒久的な転送は308(301も指定できる) |
| STUDIO | リダイレクトページ。Businessプラン以上。2026年1月から、.php で終わるパスからの転送は動かない |
Googleは、301と308をどちらも恒久的な転送として扱います。WordPressのサイトをSTUDIOで作り直す場合、旧URLが .php で終わっていると、STUDIOの機能では転送できません。
この手順を、自社サイトに当てはめた記録です。chapter-tech.com は2026年2月、Wixで作っていたサイトを、同じドメインのまま自前のコードで作り直しました。移行の直前にWixのサイトマップに載っていた旧URLは17件で、今の応答を10月26日に全件確かめました。
| 旧URL | 件数 | 今の応答 |
|---|---|---|
| トップページ(/) | 1 | 同じURLのまま |
| /contactus、/digistep-ai | 2 | 301で、お問い合わせとサービスのページへ |
| /post/○○(ブログ記事)、/news(お知らせ) | 14 | 410 |
14件は、/post/aのコピー や /post/testaaaa のような記事と、そのカテゴリーのページです。作り直しのときに「価値のない旧URL」と判断し、新しいサイトに対応するページを作りませんでした。
この形になるまでに、半年かかっています。設定ファイルの履歴から読み取れる経過は次のとおりです。当時の応答そのものは記録していません。
- 2月8〜9日: 対応するページへの301を2件、トップページへの301を11件設定しました。2月9日の時点で、残りの3件は、どのURLにもトップページの中身を200で返す受け皿に入っていました。どちらも、Googleが soft 404 とみなしうる形です。
- 6月30日: Search Consoleのリダイレクトの問題を受けて、転送先のURLの末尾のスラッシュをそろえ、Wix時代の別のURL(/aboutus など)の転送を足しました。/news もトップページへの301に加えました。
- 7月4日: 受け皿をやめ、存在しないURLには404を返すようにしました。
- 8月3日: トップページへの301をやめ、Wix時代の不要なURLは410を返すように変えました。
最初から対応表を作り、行き先の無いURLを410にしていれば、6月以降の3回の修正は要らなかったと考えています。サイトマップに載っていなかった古いURL(/top など)は、今は404を返します。
Search Consoleの確認方法も、作り直しで影響を受けます。HTMLファイルやHTMLタグで所有権を確認していた場合、確認ファイルを削除すると未確認の状態になります。新しいサイトにも同じファイルやタグを置くか、DNSのレコードで確認するドメインプロパティに切り替えます。ドメインプロパティを確認する方法はDNSのレコードだけです。確認できたら、新しいサイトのサイトマップを送信します。
4. メールの接続設定と過去メールの移行を分ける
メールの引き継ぎは、届け先の設定と、過去のメールの2つに分かれます。
- 届け先は、DNSのMXレコードで決まります。Google Workspaceのヘルプは、送信元のコンピュータがメールの配信先を特定するためにMXレコードを検索する、と説明しています。送信元の証明に使うSPFなどは、TXTレコードに入っています。
- 過去のメールは、メールサービスのメールボックスの中にあります。MXレコードを残しても、メールボックスのあるサービスを解約すれば、過去のメールは読めなくなります。
DNSの置き場所を変えず、サイト向けのレコードだけを書き換える場合、メールの設定は変わりません。エックスサーバーのマニュアルは、Aレコードを他社のサーバーに向けて「Aレコード相違」と表示された状態で問題ないとしています。ロリポップのDNSは任意のレコードを設定できず、サイトとメールで別のサービスを使うときは、ムームーDNSのカスタム設定で組み合わせると案内しています。
DNSの置き場所ごと移す場合は、新しいDNSにMX・TXTレコードを入れてから切り替えます。作成ツールのDNSを使っていたドメインを移管すると、ツールのDNSに入っていたレコードが引き継がれないことがあります。
- Wixは、移管後にMXレコードを追加し直すまで、ビジネス用メールが使えないと書いています。
- ジンドゥー(AIビルダー)は、ドメインの移管を始めると、そのドメインで作ったメールや転送用のアドレスが使えなくなると書いています。
- ジンドゥー(クリエイター)は、ドメインを移管してもメールアカウントは一緒に移らず、移管先で作り直すとしています。
- 一方で、ムームードメインのように、移管の申請から完了までDNSの設定を引き継ぎ、移管中もメールを送受信できるとしている事業者もあります。移管でメールが止まるかどうかは、DNSがどこにあるかで変わります。
過去のメールは、旧サービスを解約する前に移します。
- エックスサーバーは、解約したサーバーのアカウントが利用期限日から一定期間後に凍結され、使えなくなるとしています。
- ロリポップは、解約するとサイトの表示だけでなく、メールなど契約で使っているすべてのコンテンツが使えなくなるとしています。
- ジンドゥー(クリエイター)は、解約すると独自ドメインのメールアドレスがすべて停止・削除され、移管後にジンドゥーでドメインを削除すると、メールボックスの中のメールも削除されると書いています。
レンタルサーバーのメールを使っていて、サーバーを解約してサイトを別の場所へ移す場合は、メールも別のサービスへ移すことになります。新しいメールサービスでアドレスを作り、MXレコードをそちらへ向け、過去のメールは旧サーバーから書き出すか、メールソフトで新しいサービスへ移します。名刺に印刷したメールアドレスは、ドメインが同じなら変わりません。
5. 動作確認が済んでから旧契約を終える
DNSのレコードを書き換えても、すぐに全員の画面が切り替わるわけではありません。DNSの情報は各地のサーバーにしばらく保存され、保存してよい時間の上限がTTL(秒数)としてレコードごとに決められています。
- レコードだけ書き換える場合、古い値が残る上限はそのレコードのTTLです。自社ドメインのレコードは300秒でした。Cloudflareの自動設定は300秒、エックスサーバーがドメインを追加したときの初期値は3600秒、さくらインターネットの標準は3600秒です。ムームーDNSは3600秒に固定されていて変えられません。
- ネームサーバーごと移す場合、上限は、.com や .jp を管理する親のサーバーが持つ委任のTTLになります。10月26日の実測で、.com は172,800秒(48時間)、.jp と .co.jp は86,400秒(24時間)でした。
Googleは、サーバーを移すときは移転の少なくとも1週間前にTTLを数時間などに下げておくことを勧めています。DNSのTTLとは別に、Google Workspaceのヘルプは、新しいMXレコードが認識されるまでに最長で72時間ほどかかることがあると書いています。切り替えの当日は、旧サイトと新サイトのどちらが表示されても困らない状態にしておきます。
旧契約を終えるのは、新しいサイトとメールの動作を確かめ、旧サーバーへのアクセスが無くなってからです。Googleは、旧サーバーのログで、旧サーバーへのアクセスがゼロになってから停止できるとしています。移転の直後は、Googleのクロールの頻度が一時的に下がり、数日かけて戻るのも通常の動きとされています。
止めるときは、契約が分かれていることに気を付けます。Wixは、プランを解約しても、ドメインとビジネス用メールは解約されず、自動更新をそれぞれ止める必要があります。エックスサーバーは、解約するとサーバーに付いていたドメインなどの特典の利用権を失い、使い続けるには期日までに有償の契約へ変える手続きが要ります。更新日に間に合わない場合は、旧契約をもう1期間続けるほうが、メールが止まるより影響は小さいと考えています。
ここまでの作業は、ドメインの管理画面に入れれば自分で行えます。時間を取りにくい場合は、作業を依頼することになります。デジステップでは、今のドメインをお客様の名義のまま使い、今のサイトの文章・写真・構成を引き継いで作り直す形でお受けしています。旧URLから新URLへの301の対応表、メールのMX・TXTレコードの再設定、メールボックスの中身の移行まで請け負います。サイトはデジステップの公開環境へ移します。レンタルサーバーを解約する場合は、そのサーバーのメールもZoho Mailなどへ移すことになり、Zoho Mailは1アカウントあたり月額約250円が別にかかります。標準プランは、初期費用77,000円(最大10ページ)、月額2,200円です。