乗り換え・リニューアル 公開 2026.08.29 読了目安 約8分

解約したらサイトが消えるかどうかは、契約書の5か所で決まる ― 月額制かどうかは関係ない

「解約したらサイトが消えた」という話は、月額制のサービスを指して語られることが多いのですが、消えるかどうかを決めているのは料金の形ではありません。

決めているのは契約書の5か所です。どこを見ればよいかが分かれば、契約前でも、すでに契約したあとでも、自分で確認できます。

この記事の要点

  • 「サイトが消える」と呼ばれている現象は、公開が止まるだけの場合、作り直しになる場合、残りの期間分を請求される場合の三つが混ざっている。原因になる条項がそれぞれ違うため、まとめて論じても対策にならない。
  • 確認するのは、著作権の譲渡に27条と28条が書かれているか、納品物にソースコードが含まれるか、ドメインの登録者が誰の名前か、中途解約で残債が発生するか、解約時の引き渡しに期限と形式と費用が書かれているかの5点である。
  • 月額課金それ自体は原因ではない。月額でも上の5点が書かれていれば持ち出せるし、買い切りでもドメインが制作会社名義なら詰まる。料金の形ではなく、条項の書かれ方だけを見ればよい。

1. 「サイトが消えた」は、三つの別々の事故が混ざっている

解約にまつわる話を集めると、同じ言葉で語られているのに、起きていることが違います。分けると三つです。

一つ目は、公開が止まるだけの場合。サイトのデータは手元にあり、ドメインも自分の名義にある。別のサーバーへ置き直せば元に戻ります。手間と数万円で済みます。

二つ目は、作り直しになる場合。公開が止まったうえに、渡せるデータが無い、あるいは渡されたデータを他所で動かせない。ここまで来ると、次の制作費がまるごとかかります。

三つ目は、解約したのに支払いが続く場合。中途解約の時点で、残りの契約期間分をまとめて請求されます。サイトが止まるかどうかとは別に、お金だけが残ります。

解約時に起きる三つの事故。公開が止まるだけの場合、作り直しになる場合、残債を請求される場合に分かれ、それぞれ原因になる条項が違う
解約時に起きる三つの事故。公開が止まるだけの場合、作り直しになる場合、残債を請求される場合に分かれ、それぞれ原因になる条項が違う

この三つは、原因になる条項が別々です。だから「サブスクは危ない」という粒度でまとめると、対策が打てません。以下、一つずつ見ていきます。

3. 条項2 ― 納品物に、動かせる形のデータが含まれているか

次に見るのは「納品物」の定義です。ここで書かれているものしか、解約時に受け取れません。

危ないのは、納品物が成果としてのサイトとだけ書かれている場合です。公開されている状態を指しているのか、それを構成するファイル一式を指しているのかが読み取れません。読み取れないまま解約すると、渡す義務の範囲でもめます。

書かれているべきなのは、次のような粒度です。

  • HTML・CSS・JavaScript・画像などのファイル一式
  • 使用しているフォントや素材の利用許諾の範囲
  • 別のサーバーで公開するための手順

ここには、料金の形とは無関係な、技術上の事情も絡みます。ノーコードのツールで作られたサイトは、ファイル一式という形での引き渡しが原理的にできないことがあります。ツールの中でしか動かない作りだからです。

デジステップでも、予約や決済のように仕組みが要る高機能プランでは Wix Studio を使う場合があり、そのときは引き渡しの形が標準プランとは変わります。ツールを使うこと自体が悪いのではなく、使うのであれば、解約時に何をどの形で渡すのかが契約書に書かれている必要がある、ということです。

見積書の段階で「制作方法」が書かれていない場合は、聞いてください。ツール名まで答えてもらえれば、それ自体が誠実さの目安になります。

4. 条項3 ― ドメインの登録者は、誰の名前になっているか

ドメインは、サイトのデータとは別に管理されています。データを全部持っていても、ドメインが制作会社の名義であれば、同じURLで再開できません。

ここで見るのは、契約書というより登録情報そのものです。

  • ドメインの登録者(レジストラント)が自社名か、制作会社名か
  • 更新料を誰が払っているか
  • 管理画面のIDとパスワードを自分が持っているか

移管の手続きは、ドメインの種類で違います。.com.net などは移管に認証コード(AuthCode、オースコード)が要ります。.jp は指定事業者の変更という手続きになります。いずれにしても登録者の権限が要るので、名義が自分でなければ、制作会社の協力なしには動かせません。

契約書側では、次のどちらかが書かれていれば十分です。

  • ドメインの登録者名義を甲(発注者)とする
  • 契約終了時、甲の指示に従い移管手続きに協力する

すでに契約している場合は、いま確認できます。.com などであれば ICANN の Lookup で登録者情報が引けます。制作会社の名前が出てきたら、更新の時期が来る前に相談したほうがよい状態です。

5. 条項4 ― 中途解約したときに、残りの期間分を払うのか

三つ目の事故、支払いだけが残る形は、契約の型で決まります。

契約書の表題が「リース契約」「割賦販売契約」になっている場合、中途解約すると残りの期間分が一括で請求されます。リースや割賦は、機器や役務の代金を分割で払う仕組みなので、途中でやめても代金そのものは消えないためです。「初期費用0円」を成立させる原資が、この形になっていることがあります。

見るところは三つです。

見る場所何が書かれているか
契約書の表題と当事者制作会社のほかに信販会社・リース会社が出てくるか
契約期間何年か。自動更新か。更新を止める通知の期限はいつまでか
中途解約解約金の有無。ある場合、残期間の全額か、一部か

自動更新の通知期限は見落としやすいところです。「期間満了の3か月前までに申し出がないときは同一条件で更新する」と書かれていれば、やめたい月の3か月前に動く必要があります。ここを外すと、意思とは関係なくもう1年が始まります。

なお、金額の大小は本質ではありません。年額をまとめて前払いする契約でも、解約金が無く、上の他の条項が整っていれば、詰まりません。

6. 条項5 ― 解約時の引き渡しに、期限と形式と費用が書かれているか

最後は、実際に手を動かす段の話です。ここが書かれていない契約書は珍しくありません。書かれていないと、引き渡しは義務ではなく好意になります。

必要なのは四つです。

  1. 引き渡す義務があること。「甲の請求により、乙は成果物一式を引き渡す」
  2. 期限。解約日から何営業日以内か
  3. 形式。どういうファイルで渡すのか
  4. 費用。無償か、有償なら金額はいくらか

もう一つ、サーバーが止まるまでの猶予も見ておいてください。解約日にそのまま停止するのか、一定期間は残るのか。移転先の準備には実際には日数がかかるので、猶予が無い契約だと、その期間サイトが表示されません。

有償であること自体は、おかしなことではありません。引き渡しには作業が発生します。問題になるのは、金額が書かれていない場合です。書かれていなければ、辞めると決めたあとに提示されることになります。

7. 契約前と契約後で、確認の順番が変わる

五つを並べると多く見えますが、実際に確認する順番は状況で決まります。

五つの条項と、それぞれが防ぐ事故の対応。著作権と納品物は作り直しを、ドメイン名義は公開停止を、契約期間は残債請求を防ぐ
五つの条項と、それぞれが防ぐ事故の対応。著作権と納品物は作り直しを、ドメイン名義は公開停止を、契約期間は残債請求を防ぐ

これから契約する場合。契約書を受け取ったら、上から5か所を探して、書かれていなければ追記を依頼します。追記の依頼は、値引き交渉と違って断る理由がほとんどありません。ここで渋られるかどうかが、いちばん確度の高い判断材料になります。

すでに契約している場合。順番が変わります。先にドメインの名義を確認してください。契約書を読み直すより早く、しかも移管に時間がかかるのはここだからです。次に契約期間と自動更新の通知期限。この二つは期日があるので、気づいた時点で動く必要があります。著作権と納品物の定義は、実際に動かす段になってから確認しても間に合います。

契約書が手元にない場合。発行を求めてください。応じてもらえないのであれば、それ自体が答えです。

なお、ここに書いたのは契約書のどこを見るかという実務の話で、個別の契約の解釈や有効性の判断ではありません。金額が大きい場合や、すでにもめている場合は、弁護士や地域の消費生活センターにご相談ください。

8. デジステップがどう書いているか

同じ物差しを自分に当てておきます。デジステップは初期費用77,000円、月額2,200円の月額制です。月額制それ自体は原因ではない、と書いた以上、条項の側を出しておく必要があります。

条項デジステップの条件
所有権・データ制作したサイトのデータは発注者の資産。解約しても消えない
ドメイン・各種アカウント納品時に管理者権限を発注者へ移管する
契約期間年間契約。解約時の違約金なし
引き渡し弊社管理サーバーから、発注者のサーバーへ移管して運用継続が可能
移管の費用契約済みサーバーへの移管オプション(保守契約なし・手順書共有)として39,600円
移管後の再依頼修正や保守を再度依頼する場合、現状把握の費用として33,000円/回

最後の二行は、書かないほうが見栄えのする項目です。ただ、前の節で「金額が書かれていないことが問題」と書いたので、自分のところだけ伏せるわけにはいきません。移管には実際に作業が発生し、移管後の環境は弊社の標準と違うので、確認の手間もかかります。その分の金額です。

月額2,200円という価格は、サーバー環境を一つに統一することで成り立っています。統一を外すなら費用が乗る、という関係になっています。

よくあるご質問

契約書に「著作権は譲渡する」とだけ書かれています。作り直せますか。

譲渡の対象に27条・28条が特掲されていない場合、それらの権利は譲渡した側に留保されたものと推定されます。実務上は、制作会社に一文の追記か、改変を認める旨の書面をもらうのが早い解決です。

ドメインが制作会社の名義でした。取り戻せますか。

登録者の変更手続きに制作会社の協力が要ります。多くの場合は依頼すれば応じてもらえますが、更新時期が近いと間に合わないことがあるため、気づいた時点で動くのが確実です。

月額制のサービスは避けたほうがよいですか。

料金の形は判断材料になりません。月額でもこの記事の5か所が書かれていれば持ち出せますし、買い切りでもドメインが制作会社名義なら同じURLで再開できません。見るのは条項だけで足ります。

出典

書いた人

日野 政人(Chapter Tech合同会社 代表)

Chapter Tech合同会社 代表。ITコンサル・PMOとして大規模システム開発に携わる一方、Web制作サービス「デジステップ」で小規模事業者のサイト制作と運用を手がけている。