1. 「必要か」は、客があなたを知ったあとの行動で決まる
「開業するならホームページくらいは持つべきだ」という一般論にも、「今はSNSがあるから要らない」という逆張りにも、実は根拠がありません。どちらも業種や時代の話をしていて、肝心のものを見ていないからです。
肝心なのは、あなたの客が、あなたを知ってから来るまでの間に何をするかです。
開業したばかりの事業に、客は次のどちらかの経路で来ます。
- 確かめてから来る。紹介された名前を検索する。地図アプリで見つけて、営業時間と場所とメニューを確認する。SNSで知って、料金と実績を調べる。
- その場で完結する。元請けから仕事を受ける。既存の取引先の紹介で、会う前から発注が決まっている。店の前を通りかかって入る。
前者の経路が太い商売では、確かめる先が無いことがそのまま機会損失になります。後者が中心なら、開業の初日にホームページが無くても売上は変わりません。
だから「必要ですか」への正しい答えは、業種名からではなく、開業後の客がどちらの経路で来る見込みかから出します。以下、順番に具体化します。
2. 確かめる先が無いとき、実際に何が起きるか
「確かめてから来る」を、場面に分けます。開業後に実際に起きるのは次の四つです。
紹介されて、検索される。開業直後のいちばん太い経路は紹介です。紹介された人は、会う前か会ったあとに名前を検索します。何も出てこない、あるいは開業前の勤め先や同名の別事業が出てくると、紹介の熱は一段下がります。紹介してくれた人も、次からは「サイトはまだ無いんだけど」という前置きを付けることになります。
地図で見つかって、確認される。店舗や教室であれば、客はGoogleマップで見つけて、営業時間・場所・料金を確かめます。Googleビジネスプロフィールだけでも最低限の情報は出せますが、書ける量に限りがあり、メニューの詳細や人柄までは載りません。プロフィール欄のリンク先が無い状態は、確認したい客を途中で止めます。
審査で、調べられる。創業融資の面談、補助金の申請、法人口座の開設、カード決済の導入審査。開業まわりの手続きでは、事業の実在を確かめる材料としてホームページを見られる場面が続きます。無ければ通らないというものではありませんが、事業内容を説明する資料を毎回別に用意することになります。
応募の前に、見られる。人を雇う段になると、応募者は求人票の給与より先に、どんな会社かを検索します。ここは開業直後には関係ありませんが、「あとで要る」場面として決まって訪れます。
四つに共通するのは、こちらから売り込む場面ではなく、向こうが確かめに来る場面だということです。ホームページは集客の道具である前に、確かめに来た人を取りこぼさないための受け皿です。
3. 急がなくてよいのは、どういう場合か
逆に、開業の初日に無くても困らない場合をはっきりさせておきます。
- 元請け・下請けの関係で仕事が来る。建設や製造の下請け、業務委託のフリーランスなど、発注者が固定されていて、新規の客が名前を検索する場面がそもそも無い。
- 既存の人間関係だけで当面回る。前職からの顧客を引き継いで独立した士業やコンサルタントで、紹介元が濃く、しばらく新規を追わない。
- プラットフォームの中で完結している。ハンドメイド販売やオンラインレッスンで、集客も決済も販売サイトやSNSの中で済んでいる。
こうした場合、開業と同時に慌てて作る理由はありません。ただし、急がないことと、要らないことは別です。前の節の四つの場面のうち、審査と求人は事業を続けていればいずれ来ます。下請けから元請けに上がるとき、与信の材料として会社のサイトを見られるのも同じです。
目安を一つに絞るなら、「新規の客や取引先が、こちらの名前を検索する場面が月に一度でもあるか」で判断してください。あるなら受け皿を先に作る。無いなら、その場面が見えてから作り始めても間に合います。
4. SNS・地図・ポータルは、代わりになるか
「InstagramとGoogleマップがあれば十分では」という判断は、半分正しく、半分危ういものです。それぞれ、受け持てる範囲がはっきり違います。
| 手段 | できること | 受け皿として欠けるもの |
|---|---|---|
| 日々の発信で知ってもらう。雰囲気を伝える | Googleの検索結果にほぼ出ない。料金・アクセスなど確認情報の置き場が無い | |
| Googleビジネスプロフィール | 地図に載る。営業時間・場所・口コミ | 書ける情報量に上限がある。サービスの説明や人柄までは載らない |
| ポータル・予約サイト | 送客そのもの | 掲載費が続く。同業と並べて比較される。情報の見せ方を選べない |
三つに共通する構造もあります。いずれも他社のサービスの中に置いた情報であって、自分の資産ではないということです。規約の変更、掲載順位の変動、アカウントの停止は、こちらの都合と無関係に起きます。
開業の初期に、知ってもらう手段としてSNSや地図から始めること自体は合理的です。順番の付け方はホームページとInstagramのどちらを先に始めるかで業種別に書きました。
5. 作ると決めたら、開業日のいつから動くか
作ると決めた場合は、時間の逆算だけ押さえてください。
制作そのものの期間は、デジステップの場合で約2週間〜1か月です。ただ、その前に屋号を確定し、ドメインを取り、原稿と写真を揃える時間が要ります。ここを含めると、開業日の1か月半前に相談を始めると、開業日に間に合うというのが実務の感覚です。
開業日を過ぎてから作り始めても、もちろん作れます。ただ、公開が開業に間に合わないと、名刺やチラシにURLが載らない、地図のプロフィールにリンク先が無い、紹介の検索が空振りする、という小さな取りこぼしが、開業直後のいちばん大事な時期に重なります。
段取りの詳細は開業前でもホームページは作れるかに分けました。開業前は写真も実績も揃っていないのが普通で、それでも作り始められます。何が無くても進められて、何が決まっていないと止まるのかも、その記事に書いています。
6. 開業時のホームページは、5〜10ページで足りる
最後に、規模の目安です。開業時に大きなサイトは要りません。確かめに来た人が知りたいことは決まっているからです。
| ページ | 役割 |
|---|---|
| トップ | 何の事業かが3秒で分かること |
| サービス・メニュー | 提供する内容と範囲 |
| 料金 | 目安でよいので金額を出す |
| プロフィール・会社概要 | 誰がやっているのか。経歴と顔 |
| アクセス・営業時間 | 店舗・事務所の場合 |
| お問い合わせ | フォーム、LINE、電話のいずれか |
これで5〜6ページ、業種によって実績紹介やよくある質問を足して10ページ以内です。デジステップの標準プラン(初期費用77,000円・最大10ページ)がこの範囲に収まるように設計してあるのは、開業時に必要な受け皿がちょうどこの大きさだからです。
ブログや採用ページのような「育てるページ」は、事業が動いてから足せば間に合います。最初の1本は、確かめに来た人を受け止める最小限の構成で公開して、早く開業の実務に戻るのが正解です。用意する材料の中身は写真と文章の記事にまとめてあります。