開業・独立 公開 2026.09.01 読了目安 約7分

開業したらホームページは必要か ― 決めるのは業種ではなく、客の来かたである

開業したらホームページが要るかどうかは、業種では決まりません。決めているのは、あなたを知った人が次に何をするかです。

名前を検索して確かめてから来る商売なら、受け皿が無いぶんだけ客が減ります。その場で完結する商売なら、急ぐ理由はありません。この分かれ目を、制作する側から具体的に書きます。

この記事の要点

  • 分かれ目は、客が「名前を知ってから、確かめてまで来る」商売かどうかにある。紹介・検索・地図の経路で来る客は、確かめる先が無いと途中で消える。
  • 確認される場面は集客だけではない。創業融資の審査、法人口座の開設、取引先の与信、求人の応募前と、開業後に「調べられる」場面は決まって訪れる。
  • 作ると決めたら、開業日の1か月半前に動き始めると開業日に間に合う。開業時は5〜10ページの受け皿で足り、作り込みは事業が動いてからでよい。

1. 「必要か」は、客があなたを知ったあとの行動で決まる

「開業するならホームページくらいは持つべきだ」という一般論にも、「今はSNSがあるから要らない」という逆張りにも、実は根拠がありません。どちらも業種や時代の話をしていて、肝心のものを見ていないからです。

肝心なのは、あなたの客が、あなたを知ってから来るまでの間に何をするかです。

開業したばかりの事業に、客は次のどちらかの経路で来ます。

  • 確かめてから来る。紹介された名前を検索する。地図アプリで見つけて、営業時間と場所とメニューを確認する。SNSで知って、料金と実績を調べる。
  • その場で完結する。元請けから仕事を受ける。既存の取引先の紹介で、会う前から発注が決まっている。店の前を通りかかって入る。

前者の経路が太い商売では、確かめる先が無いことがそのまま機会損失になります。後者が中心なら、開業の初日にホームページが無くても売上は変わりません。

ホームページが要るかどうかは、客が確かめてから来る商売か、その場で完結する商売かで決まる
ホームページが要るかどうかは、客が確かめてから来る商売か、その場で完結する商売かで決まる

だから「必要ですか」への正しい答えは、業種名からではなく、開業後の客がどちらの経路で来る見込みかから出します。以下、順番に具体化します。

2. 確かめる先が無いとき、実際に何が起きるか

「確かめてから来る」を、場面に分けます。開業後に実際に起きるのは次の四つです。

紹介されて、検索される。開業直後のいちばん太い経路は紹介です。紹介された人は、会う前か会ったあとに名前を検索します。何も出てこない、あるいは開業前の勤め先や同名の別事業が出てくると、紹介の熱は一段下がります。紹介してくれた人も、次からは「サイトはまだ無いんだけど」という前置きを付けることになります。

地図で見つかって、確認される。店舗や教室であれば、客はGoogleマップで見つけて、営業時間・場所・料金を確かめます。Googleビジネスプロフィールだけでも最低限の情報は出せますが、書ける量に限りがあり、メニューの詳細や人柄までは載りません。プロフィール欄のリンク先が無い状態は、確認したい客を途中で止めます。

審査で、調べられる。創業融資の面談、補助金の申請、法人口座の開設、カード決済の導入審査。開業まわりの手続きでは、事業の実在を確かめる材料としてホームページを見られる場面が続きます。無ければ通らないというものではありませんが、事業内容を説明する資料を毎回別に用意することになります。

応募の前に、見られる。人を雇う段になると、応募者は求人票の給与より先に、どんな会社かを検索します。ここは開業直後には関係ありませんが、「あとで要る」場面として決まって訪れます。

確かめる先が無いと止まる四つの場面。紹介されたあとの検索、地図からの確認、融資や口座開設の審査、求人の応募前
確かめる先が無いと止まる四つの場面。紹介されたあとの検索、地図からの確認、融資や口座開設の審査、求人の応募前

四つに共通するのは、こちらから売り込む場面ではなく、向こうが確かめに来る場面だということです。ホームページは集客の道具である前に、確かめに来た人を取りこぼさないための受け皿です。

3. 急がなくてよいのは、どういう場合か

逆に、開業の初日に無くても困らない場合をはっきりさせておきます。

  • 元請け・下請けの関係で仕事が来る。建設や製造の下請け、業務委託のフリーランスなど、発注者が固定されていて、新規の客が名前を検索する場面がそもそも無い。
  • 既存の人間関係だけで当面回る。前職からの顧客を引き継いで独立した士業やコンサルタントで、紹介元が濃く、しばらく新規を追わない。
  • プラットフォームの中で完結している。ハンドメイド販売やオンラインレッスンで、集客も決済も販売サイトやSNSの中で済んでいる。

こうした場合、開業と同時に慌てて作る理由はありません。ただし、急がないことと、要らないことは別です。前の節の四つの場面のうち、審査と求人は事業を続けていればいずれ来ます。下請けから元請けに上がるとき、与信の材料として会社のサイトを見られるのも同じです。

目安を一つに絞るなら、「新規の客や取引先が、こちらの名前を検索する場面が月に一度でもあるか」で判断してください。あるなら受け皿を先に作る。無いなら、その場面が見えてから作り始めても間に合います。

4. SNS・地図・ポータルは、代わりになるか

「InstagramとGoogleマップがあれば十分では」という判断は、半分正しく、半分危ういものです。それぞれ、受け持てる範囲がはっきり違います。

手段できること受け皿として欠けるもの
Instagram日々の発信で知ってもらう。雰囲気を伝えるGoogleの検索結果にほぼ出ない。料金・アクセスなど確認情報の置き場が無い
Googleビジネスプロフィール地図に載る。営業時間・場所・口コミ書ける情報量に上限がある。サービスの説明や人柄までは載らない
ポータル・予約サイト送客そのもの掲載費が続く。同業と並べて比較される。情報の見せ方を選べない

三つに共通する構造もあります。いずれも他社のサービスの中に置いた情報であって、自分の資産ではないということです。規約の変更、掲載順位の変動、アカウントの停止は、こちらの都合と無関係に起きます。

開業の初期に、知ってもらう手段としてSNSや地図から始めること自体は合理的です。順番の付け方はホームページとInstagramのどちらを先に始めるかで業種別に書きました。

5. 作ると決めたら、開業日のいつから動くか

作ると決めた場合は、時間の逆算だけ押さえてください。

制作そのものの期間は、デジステップの場合で約2週間〜1か月です。ただ、その前に屋号を確定し、ドメインを取り、原稿と写真を揃える時間が要ります。ここを含めると、開業日の1か月半前に相談を始めると、開業日に間に合うというのが実務の感覚です。

開業日を過ぎてから作り始めても、もちろん作れます。ただ、公開が開業に間に合わないと、名刺やチラシにURLが載らない、地図のプロフィールにリンク先が無い、紹介の検索が空振りする、という小さな取りこぼしが、開業直後のいちばん大事な時期に重なります。

段取りの詳細は開業前でもホームページは作れるかに分けました。開業前は写真も実績も揃っていないのが普通で、それでも作り始められます。何が無くても進められて、何が決まっていないと止まるのかも、その記事に書いています。

6. 開業時のホームページは、5〜10ページで足りる

最後に、規模の目安です。開業時に大きなサイトは要りません。確かめに来た人が知りたいことは決まっているからです。

ページ役割
トップ何の事業かが3秒で分かること
サービス・メニュー提供する内容と範囲
料金目安でよいので金額を出す
プロフィール・会社概要誰がやっているのか。経歴と顔
アクセス・営業時間店舗・事務所の場合
お問い合わせフォーム、LINE、電話のいずれか

これで5〜6ページ、業種によって実績紹介やよくある質問を足して10ページ以内です。デジステップの標準プラン(初期費用77,000円・最大10ページ)がこの範囲に収まるように設計してあるのは、開業時に必要な受け皿がちょうどこの大きさだからです。

ブログや採用ページのような「育てるページ」は、事業が動いてから足せば間に合います。最初の1本は、確かめに来た人を受け止める最小限の構成で公開して、早く開業の実務に戻るのが正解です。用意する材料の中身は写真と文章の記事にまとめてあります。

よくあるご質問

開業してしばらく経ってから作るのでは遅いですか。

遅くはありませんが、公開したページが検索結果に安定して出るまでには日数がかかるため、「作ろうと決めた日」と「受け皿として働き始める日」はずれます。紹介や審査など、確かめられる場面が先に見えているなら、その場面から逆算して動くほうが確実です。

無料の作成ツールで自分で作るのでは駄目ですか。

受け皿として機能するなら自作でも問題ありません。判断基準は、事業の名前で検索して出てくるか、料金・場所・連絡先が迷わず見つかるかの2点です。ただ、作る時間が開業準備そのものを圧迫しているなら、外注して本業の準備に時間を戻すほうが割に合うことが多いのも実情です。

開業届を出す前でも制作を頼めますか。

頼めます。個人名で契約して進め、屋号が確定した時点で表記を差し替えるのが通常の進め方です。開業前に決めておく必要があるのは屋号の表記くらいで、詳しくは開業前の作り方の記事にまとめています。

書いた人

日野 政人(Chapter Tech合同会社 代表)

Chapter Tech合同会社 代表。ITコンサル・PMOとして大規模システム開発に携わる一方、Web制作サービス「デジステップ」で小規模事業者のサイト制作と運用を手がけている。