1. 料金1つを変える前に、掲載箇所を洗い出す
この記事の検証には、架空のハウスクリーニング店「みずいろハウスクリーニング」のサイトを使いました。実在するお店ではありません。トップ、料金表、よくある質問、お知らせ、店舗情報、過去のブログ記事の6ページに、料金のシミュレーター(JavaScript)、グラフの画像、料金表のPDF、llms.txt、sitemap.xml を付けた、小さな事業者によくある構成です。
変える内容は、エアコンクリーニング(通常タイプ)を11,000円から12,100円に、10%値上げすることです。AIに頼む前に、この料金と、そこから計算される値が書かれた場所を、すべて書き出しました。
文字として書かれていたのは33か所でした。料金表や見出しのように数字がそのまま書かれた場所のほかに、次のような場所があります。
- 計算で出る金額。税抜の額、初回1,000円引きの額、2台で5%引きの額、3年間の合計、地域の平均との差額、グラフの棒の長さです。11,000という文字を含まないので、旧い料金で文字を検索しても見つかりません。
- 表記ゆれ。「1.1万円」「¥11,000」、JavaScript の中のカンマのない「11000」です。
- 検索結果や共有のための情報。title、meta description、SNSで共有されたときに出る og:title と og:description です。
- 構造化データ(JSON-LD)。料金表ページの Offer の price と、よくある質問の FAQPage の回答文です。
- 改定日の表記。料金表の「2025年4月1日改定」という一文です。
画像とPDFの中にも3か所ありました。料金を焼き込んだバナーのPNG、トップの大きな画像(ヒーロー画像)、料金表のPDFです。ヒーロー画像は拡張子が .svg ですが、中身はPNGを1枚埋め込んだもので、文字の要素を持っていません。この3か所は、文字の検索では見つかりません。
変えてはいけない場所も10か所ありました。そのうち5か所は、同じ11,000円のレンジフードの清掃で、トップ、料金表(税込と税抜)、構造化データ、llms.txt に載っています。ほかに、地域の同業の平均13,000円、出張費1,100円、出張費が無料になる条件の「10,000円以上」、2025年4月の「11,000円に改定しました」というお知らせ、トップの構造化データにある価格帯(priceRange)の下限です。お店で最も安いメニューはレンジフードの11,000円なので、通常タイプを値上げしても、価格帯の下限は11,000円のままが正しい値です。
お掃除機能付きの料金に関わる場所も13か所ありました。料金表には「お掃除機能付きは、通常タイプに5,500円を加えた料金です」とあり、お掃除機能付きの16,500円も上げるのか、加算額を変えて据え置くのかで、直す場所が変わります。ほかに、日付つきの過去のブログ記事にある「2025年7月時点」の料金も、残すか直すかを決める場所です。
一覧を先に作るのは、AIの作業を確かめるときの物差しにするためです。直したあとで「どこを変えたか」をAIに聞くだけでは、AIが見落とした場所は答えに出てきません。
このような散らばりは、デジステップのサイトにもあります。2026年8月26日、LPの契約条件の表記を、AIのコーディングエージェント(Claude)と一緒に直しました。変更は画面に描くファイル1つだけで、検索エンジンが最初に読む静的なHTMLと、FAQの構造化データの元になる別のファイルは、2日後の8月28日に直すまで、古い契約期間と修正回数の上限のままでした。git の記録で確かめた事実です。その後、料金を1つのファイルにまとめ、各ページはそこから金額を読む作りにしました。それでも2026年10月22日の時点で、そのファイルの外に、お問い合わせフォームの選択肢と事例ページの文字の2か所と、LPの上部の画像2枚(PC用とスマホ用)に、初期費用の金額が残っています。画像の金額は、絵として焼き込まれています。
2. 同じ変更を依頼するための指示と正解表
同じ値上げを、4つのやり方で3回ずつ、計12回頼みました。
| やり方 | AIに渡したもの | 指示 |
|---|---|---|
| チャットに貼る | 料金表ページのHTML 1枚 | 旧値→新値。更新後のHTMLを全文返す |
| フォルダを渡す(1) | サイトのファイル一式 | 旧値→新値 |
| フォルダを渡す(2) | サイトのファイル一式 | 「10%値上げ」だけ |
| フォルダを渡す(3) | サイトのファイル一式 | 「10%値上げ」+確認の指示5項目 |
フォルダを渡すやり方は、Codex や Claude Code のように、ファイルを読み書きできるAIのエージェントに、サイトのフォルダを任せる形です。実施は2026年10月22日で、AIは Claude Sonnet 5.5 です。1回ごとに新しいセッションで頼み、検証であることは伝えていません。この環境では ChatGPT と Codex を動かせなかったため、Claude だけで試しました。ほかのAIやモデルでは、結果が変わる可能性があります。チャットに貼るやり方は、ファイルや道具を使わず返答の文章だけで答えるよう指定して、その代わりにしました。返ってきたHTMLを元の料金表ページと差し替えて確かめています。
旧値と新値を渡す指示は、次の文面です。
このフォルダは私の店のホームページ一式です: (フォルダの場所)
エアコンクリーニング(通常タイプ)の料金を、11月1日から11,000円から12,100円に値上げします。サイトを更新してください。
終わったら、何をしたかを短く教えてください。「10%値上げ」の指示は、2行目を「11月1日から10%値上げします」に変えただけで、金額を書いていません。確認の指示つきでは、その後ろに次の5項目を足しました。
次の点も確かめてください。
- ページの本文だけでなく、title・meta description・OGP・構造化データ(JSON-LD)・画像のalt・llms.txt・sitemap.xml も対象です。
- 料金から計算している金額(税抜・割引後・合計・差額・グラフの長さなど)は計算し直してください。
- 同じ金額の別のメニューや、過去のお知らせ・日付のある記事の金額は変えないでください。
- 画像やPDFの中に書かれた料金で、直せないものは一覧にして報告してください。
- 最後に、変更した場所の一覧(ファイル・変更前・変更後)を出してください。正解表は、AIに頼む前に固定しました。1章の一覧の1か所ずつに「直す」「変えない」「人の作業が要る(画像・PDF)」を付け、結果は採点用のスクリプトで機械的に突き合わせています。数え方は、別の手順でもう一度数え直し、すべての項目で一致することを確かめました。
結果を見たあとで、正解表の読み替えを2つ、採点の読み取り方の修正を1つ行いました。1つ目はお掃除機能付きの扱いです。正解表では、お掃除機能付きも通常タイプに連動して17,600円になるとしていました。ところが12回すべてが、お掃除機能付きを16,500円に据え置き、加算額を5,500円から4,400円に書き換えていました。12回すべてが、据え置いたことを最後の報告に書き、上げる場合の扱いにも触れています。フォルダを渡した9回は依頼者に尋ね、チャットの3回は上げる場合の直し方を案内していました。指示の文面からはどちらの解釈も成り立つので、この13か所は採点から外し、どちらかの解釈でサイト全体がそろっているかだけを見ました。12回とも、据え置きの解釈でそろっていました。連動する料金をどうするかは、指示に書かないとAIが決めることになります。2つ目はバナー画像の alt で、画像を作り直さない限り旧い料金のままが画像の中身と一致するので、直す場所の数から外し、alt と画像がそろったかを別に見ました。3つ目は、料金表の改定日を読み取る規則です。文の形を変えて新しい日付を書いた3回を読み取れていなかったので、読み取り方を直しました。正解の値は変えていません。
3. 本文・検索用情報・構造化データの反映を比べる
直す場所の33か所のうち、バナー画像のaltを除いた32か所で、直ったかどうかを数えました。チャットに貼るやり方は、貼った料金表ページの中の14か所だけで数えています。
チャットに貼るやり方は、貼ったページの中では3回とも14か所すべてを直しました。税抜の額、2台の割引後の額、3年間の合計も計算し直しています。ただし、ほかのページやファイルには届きません。3回とも、シミュレーターのJavaScript、グラフの画像、PDF、ほかのページに旧い料金が残っている可能性を、自分から挙げていました。残りを直す作業は、依頼した人の側に残ります。
フォルダを渡して旧値と新値を伝えた3回では、1回目に2か所、2回目に3か所が旧い値のまま残りました。残ったのは、トップの og:description の「1.1万円」、よくある質問の本文の「1.1万円」、初回1,000円引きの額(10,000円のまま)、地域の平均との差額(2,000円のまま)です。3回目は旧い値こそ残しませんでしたが、og:description を「1.2万円」と、1.21万円を丸めた別の値にしていました。どれも、11,000という文字を含まない場所です。
「10%値上げ」とだけ伝えた3回と、確認の指示を足した3回では、直し漏れも別の値もありませんでした。旧値の文字列を渡すと、その文字列を探して置き換える進め方になり、文字列の一致しない場所が残ったのではないかと見ていますが、AIの作業の途中経過までは確かめていません。各3回の結果なので、この差を一般的な傾向とは言えません。
変えてはいけない場所で目立ったのは、価格帯(priceRange)でした。フォルダを渡した9回のうち7回が、トップの構造化データの価格帯を「¥11,000〜」から「¥12,100〜」に書き換えていました。最も安いメニューはレンジフードの11,000円なので、これは誤りです。正しく11,000円のままにしたのは、確認の指示を足した3回のうち2回だけでした。そのうち1回は「レンジフードが11,000円なので最安値は変わらない」と理由を報告し、もう1回は変えなかった場所としてレンジフードの料金と並べて挙げていました。
ほかの変えてはいけない場所は、フォルダを渡した9回とも変わっていませんでした(チャットの3回も、料金表ページの中の3か所は変えていません)。同じ11,000円のレンジフード、地域の平均13,000円、出張費1,100円、「10,000円以上で出張費無料」の条件、2025年4月のお知らせです。日付つきのブログ記事の料金は、9回とも当時の記録として残していました。構造化データは12回とも JSON として正しく読める形のままで、料金表の Offer と FAQPage の回答文は、フォルダを渡した9回すべてで新しい料金になっていました。
sitemap.xml の更新日(lastmod)は、扱いが分かれました。フッターを直したので6ページすべてが変わっていますが、6ページすべての更新日を直したのは9回中2回で、5回はブログなど一部のページが古いまま、2回は1ページも更新しませんでした。Google は lastmod を、一貫して正確な場合に使うと説明しています。本文や構造化データを変えたページは、更新日を変える対象です。
検索結果への影響は、場所によって違います。Google の説明では、検索結果のタイトルは title だけでなく、ページの見出しや og:title などからも決まり、説明文(スニペット)は主にページの本文から作られ、meta description は使われる場合があるという扱いです。構造化データは、ページの内容と一致させることが求められています。旧い料金が og:description や構造化データに残ると、検索結果やSNSの共有カードに旧い料金が出るおそれがあり、ページの本文に残れば、そこから説明文が作られることもあります。
4. 画像内の金額・年間総額・外部掲載の確認
文字のファイルは、フォルダを渡せばAIが読んで直せました。画像とPDFの中の料金と、サイトの外の掲載は、扱いが違います。
バナーのPNGとPDFは、フォルダを渡した9回すべてが気づきました。9回中1回は画像とPDFを作り直し(PDFは見た目が元と違うものになったと報告しています)、残りは作り直しを依頼者に頼む形で報告しました。作り直せるかどうかは、AIがその環境で使える道具によると考えています。
ヒーロー画像に焼き込まれた料金に気づいたのは、9回中2回でした。1回は作り直し、1回は報告しています。残りの7回は、作り直しも報告もしていません。この画像は拡張子が .svg で、中に文字の要素がなく、絵として料金が入っています。PNGやPDFは「中に料金があるかもしれないファイル」として扱われましたが、SVGは文字のファイルとして読まれ、料金の文字が無いので見過ごされた、と見ています。AIの作業の途中経過は確かめていません。デジステップのLPの上部にあるPC用の画像も、文字の要素を持たず、絵を埋め込んだSVGです。
バナーの alt(画像の代わりに読まれる文字)の扱いも分かれました。2回は、画像を作り直さないまま alt だけを12,100円にしていて、画像と alt の料金が食い違いました。ほかは、alt を画像に合わせて旧い料金のままにするか、画像を作り直すか、画像をページから外していました。頼んでいない変更もありました。9回中2回はバナーの画像をトップから外し、そのうち1回はPDFのダウンロードのリンクも外しています。どちらも最後の報告には書かれていました。
2台の割引後の額(22,990円)、3年間の合計(36,300円)、グラフの棒の長さは、フォルダを渡した9回すべてで正しい値でした。計算で出る金額のうち直っていなかったのは、旧値と新値を渡した1回の、初回割引の額と地域の平均との差額です。
サイトの外の掲載は、サイトのファイルを直しても変わりません。Googleビジネスプロフィールの料金や説明は、プロフィールの側で別に編集します。Google のヘルプには、更新されたプロフィールを公開する前に変更内容を確認すると書かれていて、反映までの時間は書かれていません。ポータルサイトやSNSのプロフィールに料金を載せていれば、それぞれで直すことになります。
検索結果の表示も、すぐには変わりません。Google は、タイトルの変更に気づくには再クロールと再処理が必要で、数日から数週間かかることがあると説明しています。再クロールは Search Console のURL検査や sitemap の送信で依頼できますが、依頼しても掲載は保証されません。llms.txt は、Google 以外のAIのサービスが読む可能性のある写しで、Google 検索そのものは使わないと Google は説明しています。
公開のタイミングは、12回すべてが指摘しました。実施した10月22日に新料金のサイトを公開すると、11月1日より前から新しい料金が表示されます。AIはファイルを書き換えますが、いつ公開するかは依頼した人が決めることになります。作成サービスに組み込まれたAI(Wix の Aria など)でも同じ変更を頼めますが、今回は試していません。Wix は Aria の案内に「AIは間違えることがあるので、結果を必ず確かめる」という趣旨の注意を載せています。
5. 公開前の確認と、失敗したときに戻す手順
ここまでの結果から、料金を変えるときの流れを次のように組んでいます。
直したAIとは別のAIに、漏れを探させる確認も試しました。問題の残った3回の結果をコピーし、別のセッションのAIに「更新の漏れや、間違って変えてしまったところがないか確かめてください。ファイルは変更せず、一覧で教えてください」と頼みました。
| 監査した結果 | 残っていた問題 | 見つけた | 見逃した |
|---|---|---|---|
| 旧値と新値を渡した回 | 7件 | 5件 | ヒーロー画像、priceRange |
| 「10%値上げ」の回(1) | 5件 | 4件 | priceRange |
| 「10%値上げ」の回(2) | 5件 | 4件 | priceRange |
監査では、表記ゆれ、計算で出る金額、PDFの中身は見つかりました。PDFは、3回とも中の文字を読み取って旧い料金を確かめていました。直っている場所を旧い料金と誤って挙げた監査はありませんでした(日付つきの過去のブログ記事を、気になる点として挙げた回はありました)。一方で、priceRange の書き換えは3回とも見逃しました。今回の3回では、旧い料金が残っている場所を探す確認で、新しい料金にそろえすぎた場所は見つかりませんでした。頼んでいない画像やリンクの削除を「間違って変えたところ」として挙げた監査もありませんでした。直す場所と変えない場所の一覧を手元に持ち、それと突き合わせる作業は、AIの監査とは別に残ると考えています。
確かめるときに見る場所を、表にまとめます。
| 見る場所 | 確かめること |
|---|---|
| 本文・見出し・表・フッター | 全ページで新しい料金か |
| 計算で出る金額 | 税抜・割引後・合計・差額を計算し直したか |
| 表記ゆれ | 「1.1万円」「¥11,000」、カンマなしの数字 |
| title・meta description・og | 検索結果と共有カードに出る文 |
| 構造化データ | Offer・FAQの回答・価格帯。価格帯の下限は最安のメニューか |
| 変えない場所 | 同じ金額の別メニュー、過去のお知らせ、他社の数字 |
| 画像・PDF | 中の料金。alt と画像の中身が一致しているか |
| sitemap.xml・llms.txt | 変えたページの lastmod、AI向けの写し |
| 公開日 | 新しい料金が表示され始める日 |
| サイトの外 | ビジネスプロフィール、ポータル、SNS |
戻す手順は、頼む前のコピーを残しておくことから始まります。フォルダを渡すやり方なら、変更前のフォルダを丸ごと残しておけば、変更前後の差分を比べられ、問題があればそのコピーに戻せます。git で管理していれば、変更前の状態に戻すのも同じ操作で済みます。今回の検証でも、すべての結果を変更前のコピーとの差分で確かめました。作成サービスのAIで直す場合は、そのサービスに変更前へ戻す機能があるかを、頼む前に確かめておくことになります。
AIに頼めるのは、サイトのファイルをAIに渡せる場合です。料金のように数か所に散らばる情報の変更は、直す場所の一覧と、変更前のコピーがあれば、自分でAIに頼んで確かめられます。直す場所の一覧を作る作業や、画像・PDFの作り直しまで自分で持たないと決めた場合は、依頼先に任せる方法もあります。今のサイトが、AIにも人にも直しにくい作りになっている場合は、デジステップで、今のサイトの文章・写真・ドメインを引き継いで作り直すこともできます。作り直したあとの文言の変更などの軽微な修正は、1回5,500円(5か所まで)で依頼できます。修正を月額で頼むか都度払いにするかの比べ方は、ホームページの修正費用を年間の総額で比べた記事に、今のサイトを直すか作り直すかの判断は、自作ホームページは修正か作り直しかを確かめた記事にまとめています。